セレンデ取材で香港を訪れた時に
香港公園のすぐそばに建つ「ザ・マレー香港(The Murray, Hong Kong, a Niccolo Hotel)」を見学してきました。
このホテルは、イギリス建築界の巨匠ノーマン・フォスターがリノベーションを手掛けたことで知られています。
27階建て・336室を有する大規模ホテルですが、もとは1960年代に建てられた政府オフィスビル。
堅牢な構造体をそのまま活かしつつ、現代的な感性で再生された建物です。
地元では「マレービルディング」として親しまれてきたそうです。
白いアーチとリズミカルな窓がつくる独自の表情
外観の特徴は、白い外壁に並ぶアーチ形の開口部。
その上層階には、深い軒をつくりながら斜めに設置された窓が並びます。
この構造は、香港の強い日差しをコントロールすると同時に、室内からは外の景色を一枚の絵のように眺められる効果をもたらしています。
昼と夜で印象が変わる façade(ファサード)は、まさに“光をデザインする建築”といえるでしょう。
黒と金で統一された、静謐で華やかなロビー空間
建物に入ると、吹き抜けが心地いいロビーが広がります。
黒い大理石に金のラインが走る床、そして随所にゴールドの造作が上質にあつらえられています。
素材の重厚感と照明の柔らかさが絶妙に調和し、フォーマルでありながら落ち着きのある空間を演出しています。
ダイニングは華やかさと静けさが同居する特別な空間
ラウンジと隣接してダイニングが設けられています。
ガラスブロックの仕切り越しに光が揺らめき、空間全体がやわらかく包まれます。
ノーマン・フォスターらしい合理的な設計思想の中に、クラシカルな優雅さを感じる空間でした。
かつてのオフィスビルの面影を残しながら、上質な時間を提供するホテルへと再生されたこの建物。
“過去と現在の共存”というテーマを、建築そのもので表現しているように思います。
まとめ
ザ・マレー香港は、単なるホテルという枠を超えた「再生建築の象徴」。
旧いものを壊さずに、新しい価値を吹き込む。
ノーマン・フォスターが得意とするその手法が、香港というダイナミックな都市に見事に調和していました。
外観からインテリアまで、全てが“上品な時間の流れ”を感じさせる建築です。


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