睡眠や脳に関する新しい書籍が出るたびに、最新の知見を得たくて、なるべく読むようにしています。健康にも仕事のパフォーマンスにも直結するテーマなのに、どんどん常識が塗り替えられている分野だからです。今回読んだ『不夜脳』もその一つで、「眠りたいのは体で、脳は寝ていない」という著者の仮説に興味を持って手に取りました。
実際に読んでみると、科学的エビデンスも紹介されてはいるものの、核心部分は著者が脳外科医として積み上げてきた臨床をベースにした“考察型”という印象でした。学術論文というより、「仮説と実感の間を探る読み物」として楽しめる内容です。
■著者の主張と従来との違い
本書の特徴は、「眠っている=脳が停止している」という固定観念を崩す視点にあります。たとえ横になって目を閉じていても、脳は情報処理やメンテナンスを続けている。つまり、「眠っているようで脳は起きている」状態が普通にある、という捉え方です。
不眠や中途覚醒についても「眠れていない」と決めつけるのではなく、「脳が必要な作業をしているだけ」という捉え方が示されており、従来の睡眠本とは方向性が違います。
■レビューから見える読者の反応
代表的なレビューを拾っていくと、読者の反応は次の3タイプに分かれていました。
●共感型
「説明できなかった自分の睡眠のクセが腑に落ちた」
「“脳は寝てない説”という言葉に救われた」
●発見型
「夜中に目が覚める理由の説明が面白い」
「睡眠=オフじゃないという視点が新鮮」
●批判型
「仮説が多くて結論がぼやけている」
「科学的根拠より著者の経験に寄りすぎている」
ただ、全体としては、読み物として面白い!視点が変わる!という評価が目立ちます。最新の論文解説というより、「新しい脳の見方に触れる本」として読むとしっくりきます。
■個人的に刺さったポイントと実践メモ
ここからは、私自身が「これは参考になる」と感じた部分をいくつかピックアップします。
① ジャンプで記憶力アップ?
脳を鍛える方法として、「骨に刺激を与えるジャンプ」が紹介されていました。骨への刺激が認知機能に影響するという説は興味深いのですが、1日何回・何分といった具体的な回数は書かれていません。ここは自分なりに試す余地があります。
② 本来は“飢餓”が標準設定
「満腹でいること自体が異常」という視点も印象的でした。人間の生物的前提は“飢餓モード”であり、15時間程度のプチ断食はむしろ正常状態に戻る行為だという話。これは継続中の習慣として納得感がありました。でも、お腹が空くときついですよね。。。
③ 甘いものへの大誤解
「甘いもので脳が復活する」は思い込みだったという指摘には衝撃。スッキリ感は“糖+ドーパミン”の一時的効果であって、脳疲労の改善とは別問題らしいです。代わりに胡桃(クルミ)が推奨されていたので、ここは実践してみたいと思います。
④ 外国語学習は認知症予防に効く
改めて言語学習の重要性を実感。難易度ではなく「刺激の種類」としての価値があるという説明でした。
⑤ 小説が脳トレになる
読書というのは、脳に対して特別な刺激を与えるそうです。特に小説は内的視覚イメージを作り、文脈を理解するため、前頭前野と側頭葉を酷使するらしい。週に1回でも読書した人は、認知機能低下のリスクが46%低下するという実験結果もあるそうです。
⑥ ダンス&“目を瞑った運動”の効果
リズム運動や姿勢制御が脳に効くらしく、目を閉じて体を動かすだけでも運動野が鍛えられるとのこと。これは年齢問わず取り入れやすいアイデア。
⑦ 眠れなくても横になるだけで価値がある
「寝つけなくても、横になっているだけで体は休めている」という話は救いでした。“眠らなきゃ”と焦ること自体がストレスになるので、この視点は実用的です。
■まとめ:読む価値がある一冊?
「不夜脳」は、最新研究の要約本というより、「脳の働きを別の角度から捉え直す読み物」です。不眠・睡眠の悩みを抱えている人、脳科学の視点で生活改善をしたい人には、ヒントになる箇所が必ずあるはずです。
個人的には、「眠れない=ダメではない」という前提に切り替えるだけでも、気持ちがかなり軽くなりました。さらに、ジャンプ・断食・胡桃・読書・外国語・ダンスなど、実践できるネタも豊富です。
一読の価値はあると思います。


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